オフィス・店舗の原状回復

オフィス・店舗の原状回復

こんなにも違う「事業用賃貸」と「住居用賃貸」の原状回復

"事業用賃貸(オフィス・店舗)"と"住宅用賃貸"の原状回復義務の違い

原状回復をめぐる過去の敷金返金訴訟の傾向をまとめてみると、事業用賃貸(オフィス・店舗)と住宅用賃貸では原状回復義務に大きな違いがあることが分かります。
これは、主に個人契約を行う住宅用賃貸では消費者保護の観点から"消費者契約法"が適用されることが要因です。また、営利目的での利用が主となる事業用賃貸では、多数の人員の出入りをはじめ、通常使用を超える損耗が想定されることから、経年劣化による自然損耗とは認められず、原状回復特約が広く認められていると言っても過言ではありません。

主に個人契約を行う住宅用賃貸では消費者契約法が適応される。

多数の人員の出入りをはじめ通常使用を超える損耗が想定され、原状回復特約が広く認められている。

消費者契約法とは

オフィス・店舗の原状回復

住宅用賃貸では前記したとおり"消費者契約法"により賃借人の経年劣化等による通常損耗は原状回復義務にあたらないとされていますが、事業用賃貸の場合、消費者契約法が適用されず、原状回復義務の範囲が全く異なってきます。


一例として過去の判例と判決理由をみてみると、

「東京高裁 -昭和60年7月25日-」では

  • 営業店舗用建物の賃貸借契約では、賃借人が自己の営業目的に合わせて内外装工事等を行う例が多く契約締結時の原状に回復することが常に合理的であるとは限らない
  • 原状回復が賃貸人にとっても格別の意義がないことが多い、ことから「原状回復義務の履行に当たっては、賃借人としては、賃貸人との協議の結果と社会通念とに従って、賃貸人が新たな賃貸借契約を締結するについて障害が生じることがないようにすることを要し、かつ、そうすることをもって足りるものというべき

と判決されています。


上記の判断は、賃借人に原状回復義務があるとしての判断であることが分かります。

その他の判決を見ても「賃借人は賃借当時の状態にまで原状回復して返還しなければならないと」とする判決が見られ、「原状回復の義務を負わせる特約を定めることは、経済的にも合理的である」とされています。


その判決理由は以下の通りです。

東京高裁 平成12年12月27日の判決理由

  • 一般に、オフィスビルの賃貸借においては、次の賃借人に賃貸する必要から、契約終了に際し、賃借人に賃貸物件のクロスや床板、照明器員などを取り替え、場合によっては天井を塗り替えることまでの原状回復義務を課する旨の特約が付される場合
  • オフィスビルの原状回復費用の額は、賃借人の建物の使用方法によっても異なり、損耗の状況によっては相当高額になることがあるが、使用方法によって異なる原状回復費用は賃借人の負担とするのが相当である
  • 原状回復費用を賃料の額に反映させるのは、賃料額の高騰につながるだけでなく、賃借人が居している期間は専ら賃借人側の事情によって左右され、賃貸人においてこれを予測することは困難であるため、適正な原状回復費用をあらかじめ賃料に含めて徴収することは現実的には不可能

一般的に事業所用賃貸では、スケルトン状態で賃貸した後、利用者の使い勝手に合せ間仕切りや電気配線工事が行われ、中には躯体部分に関わる設備工事も多数発生します。
また、事業者である賃貸人に対し、賃借人も事業者であることから、力関係に大きな差はないと考えられるため、契約内容に基づき原状回復の義務を負うのが妥当であると考えられています。
これにより事業用賃貸では、原状回復に関する特約が大きな意味を持つこととなり、特約に明記することにより、経年劣化とされる部分にまで原状回復義務を負わせることができる
とされています。

原状回復特約の効力をめぐる裁判例の傾向

区分

傾向

理由

住宅用賃貸

消費者契約法に倣い、原状回復特約の効力を制限・否定する傾向にある

強い立場にいる賃貸人に対し、弱い立場にある賃借人(消費者)を保護する観点が根強い

事業用賃貸
(オフィス・店舗)

原状回復特約の効力を認め、通常損耗を超過する原状回復義務まで肯定する傾向にある

1.
クロス・床板・照明器具や天井塗替えまでの原状回復特約が設けられることが多い
2.
賃借人の利用目的により内装工事の程度が異なり、原状回復費用が大きく異なることから賃借人の負担とするのが相当
3.
賃借人の利用目的により内装が工事の程度が異なるため、原状回復費用を見越した賃料設定が現実的に不可能
4.
当事者双方が共に事業主という対等の立場にある

  • 事業用賃貸の場合、原状回復費用は賃借人の負担とするのが相当である

  • 事業用賃貸(オフィス・店舗)の場合、原状回復特約は効力がある

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